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閼伽出甕 論考集「翡翠と沼河比売」(17)

 

[但し書き]

#618/618 日本史ボード
★タイトル (FHJ55492)  94/ 6/11   6:48  ( 98)
古代史】RE:  赤い玉 の材は?         アコ(98行)
★内容
 三州さん、こんにちは。(脚注1)さて、私が、#607で部分引用した『釈日本紀』の
「八坂瓊之五百箇御統」項ですが、これは、『日本書紀』神代上、第六段本文
(スサノオとアマテラスの誓約)の

   スナハ ヤサカ ニ  イ ホ ツ ミスマル    コレ  ミ ス マ ル  イ     モ
‥‥、便ち八坂瓊の五百箇の御統〔御統、此をば美須磨屡と云ふ。〕を以て、‥‥

の注釈なのですが、『古事記』上巻では

  ヤサカ  マガタマ イ ホ ツ  ミ ス マ ル タマ
‥‥八尺の勾〓の五百津の美須麻流の珠を‥‥  ※「〓」は玉偏に「聰」の傍

とあり、岩波の日本古典文学大系『日本書紀』の頭注によれば、「八坂」は「八
尺」のあて字で、大きいたまの意だそうです。ちなみに、「御統」とは《多くの
勾玉や管玉を、緒で貫いてまとめて輪にしたもの。飾りとして、頭部や胸・手な
どに巻いた。》とあります。(ともに、上 p104)

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や‐さか【八尺】
 八尺(ハツシヤク)。また、長いことの形容。また、その長さ。万一四「伊香保ろの―
 の堰塞(イデ)に立つ虹(ノジ)の」
やさか‐に【八尺瓊】
 (ニは玉の意) 大きな玉。一説に、多くの玉を八尺(ヤサカ)の緒に貫いてあるもの。
 上代、身につけて飾りとした。神代紀上「―の五百箇(イオツ)の御統(ミスマル)」
やさかに‐の‐まがたま【八尺瓊勾玉・八坂瓊曲玉】
 大きな玉で作った勾玉。一説に、八尺の緒に繋いだ勾玉。三種の神器の一とす
 る。神代紀上「天明玉(アマノアカルタマ)が作(ス)れる―」 〔EB『広辞苑』第四版〕
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 ということで、八坂氏とは直接の関係はないようです。なお、『釈日本紀』の
『越後国風土記』逸文は、「瓊(に)」の代わりに「丹(に)」を用いています
が、これは見た目の色と字音を合わせ取ったものかもしれません。たぶん…(^_^;)

 次に、「赤い玉」の材質ですが、本題に入る前に少々補足しておきます。私は、
#607で、角川『新字源』に「瓊」の意味として

 瓊
 (1)たま。(ア)美しい玉。(イ)に。赤い色の玉。
 (2)玉のように美しい。

とあったので、「瓊=赤い玉」としましたが、「瓊=赤玉」が正しいのかもしれ
ません。

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あか‐だま【赤玉】
 (1)赤い玉。記上「―は緒さへ光れど」
 (2)琥珀(コハク)。〈本草和名〉
 (3)佐渡などに産する碧玉(ヘキギヨク)の赤いもの。庭石として珍重。赤石。
 (4)江戸時代の売薬の名。赤い丸薬で、胃病に使われた。
へき‐ぎょく【碧玉】
 (1)みどりいろの玉。菅家文草五「―の装ひせる箏の」
 (2)(jasper) 不純物を含む石英。緻密・不透明で、酸化鉄を含むものは緑色な
 いし紅色、水酸化鉄を含むものは黄褐色。縞模様あるものを縞碧玉という。主
 にウラル・エジプト・ドイツなどに産。佐渡の赤玉、出雲の玉造石などはこれ
 に属する。玉造石は古くより曲玉(マガタマ)・管玉(クダタマ)などに作り、また印材・
 指輪・簪(カンザシ)・笄(コウガイ)などの装飾品に使用。〔EB『広辞苑』第四版〕
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 で、この「赤玉」ですが、昨日、東京国立博物館の『国宝法隆寺展』を見に行っ
たついでに、地下のミュージアム・ショップで買った『選ぶ・割る・磨く ――
旧石器時代から古墳時代までの人と石とのかかわり――』(栃木県立博物館、
1993)という目録にこんな解説がありました。

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 古代人のあこがれた色には緑色と赤色がある。緑色の石材の代表格はヒスイと
碧玉であり、赤色の代表格としては赤玉がある。碧玉というと一般に外観が緑色
の緻密な玉髄の集合体を指す。しかし、赤玉とよばれ現在でも愛石家に珍重され
る赤色の石も、実は碧玉と同じ緻密な玉髄からできている。新潟県の佐渡島では、
碧玉と赤玉が同一地域から産出する。地元では碧玉のことを青玉、黄色い碧玉を
黄玉というそうである。赤玉の玉は「ぎょく」という意味ではなく、赤玉が安山
岩などの火成岩中に脈状や塊状になって産出し、塊状のものは良質なことから
「赤玉」と呼ばれるようになったという説もある。岩石的には「流紋岩」の仲間
で、鉱物的には赤くても碧玉(ジャスパー)といい、微細な石英の結晶の集合体
である。石英は本来無色透明な鉱物であるが、粘土や酸化鉄などの不純物を取り
込むと着色する。碧玉の緑色は粘土鉱物が、赤玉の赤色は赤鉄鉱が着色の原因だ
といわれている。碧玉や赤玉はそんなに珍しい鉱物ではなく、宇都宮付近の凝灰
岩や安山岩のなかにも、まぎれもない碧玉の細脈ができていることがある。しか
し、塊状になっておらず石材としての利用価値は低い。(p55)
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 ついでに書いておくと、瑪瑙や琥珀も赤く見えますから、「瓊=赤い玉」とす
れば、材質を「赤玉」に限定する必要はないかもしれません。

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め‐のう【瑪瑙】‥ナウ
 石英・玉髄・蛋白石の混合物。主成分は膠状珪酸。樹脂光沢を有し、往々他の
 鉱物質が滲透して美しい赤褐色・白色などの縞文様を現す。細工物・彫刻材料
 などに用いる。和名抄一一「馬脳、女奈于」
こ‐はく【琥珀】
 (1)地質時代の樹脂などが地中に埋没して生じた一種の化石。塊状・礫状などで
 産し、おおむね黄色を帯び、脂肪光沢いちじるしく、透明ないし半透明。パイ
 プ・装身具・香料・絶縁材料などに用いる。赤玉。
 (2)琥珀織の略。                〔EB『広辞苑』第四版〕
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 実際、東京国立博物館には、碼碯製の勾玉も展示されていました。

                        FHJ55492  アコ


脚注1:このMSGは、三州さんが1994年6月9日に書き込まれた    #614「古代史】 赤い玉 の材は?   三州」の中で、私に問われた   「#607 の 『瓊』は『赤い玉』のことだそうですが、材質は何なんでしょ    う?」に対する回答として書いたものである。    →(本文)

脚注2:スタイルシートの影響で、半角カタカナで振ったルビがずれるため、位置    を補整した。したがって、スタイルシートを無効にしている場合、ルビが    ずれることがあるので注意!


[目次]

2002.10.07 / 2002.10.10